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ねえ、知ってる？ あんなに小さいところに昔からのあたしがいる 泣いた時は　涙だけになって 笑った時は　唇の端っこの皺だけになって うぅん　本当は　そっくりそのままの形で凝縮されて ちいさくゆがんでいる 　　 あたしを訪れる男たちの贈り物は 花と時計にきまってるから ここは花の残骸と時計でいっぱい 　　 あたしの名前は　この町の町役場が毎年発行する娼婦名簿に 今年も　もちろん登録されていて それは　ABC順なんてやぼなものじゃなくって 前年度　町役場を通しての指名の一番多かった順番に ゴチック体の大文字から　虫眼鏡で見なくちゃ見えないくらいまで 大きさもちがえてあるのだけど 　　 たとえば お友達のミス・ゴグは 文字の大きさでいうと２３ポイント スペースは１ページの半分の半分 白黒写真入り　宣伝文句は２０字まで 　　 おとなりのミス・マゴグは たったの４ポイント　写真なし　宣伝文句もたったの一行 　　 そしてもちろん第一位は　このあたし 特大のカラー写真には　おびただしい花の葬列を背景に いくつもの懐中時計を首からぶらさげたあたしが にこやかにほほえんでこう言っている 「あたしの夜のお友達　いつでもいらして 一本の花がパスポート」 　　 男たちはみんな　やさしくておしつけがましい 二人で残した時間を 時計のなかに残して帰っていく 　　 あたしの部屋は いまでは花と時計でいっぱい 　　 ああ そこにもここにも 枯れた花たち 止まった時計 死に絶えたいくつもの時間 いくつものあたし いくつものあなた いくつもの思い出
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みみずく町異聞の天辺				次へ
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