砕ける おまえの倦んだ夜 波に咲いたバラの眼 あ　もう溶けてしまう 　　 眼を瞑ると　そこは海 おまえのVie おまえの抽象の花が開く 　　 おまえは時の隠花 まぼろしの娼家に咲く 不毛の性愛 　　 ＊ 　　 行けないから 手は　愛を求めて とどかない肉になる 女はいつも男より遅すぎる そのかわり やさしくおるがんを弾く 　　 不寝番のおまえは 女の部屋に色彩を散らす 次の部屋　又　次の部屋 すべてを埋めつくす 硝子の指 　　 おまえは見えない だからおまえはひとりだ いくら咲いても いつもひとりだ 　　 ＊ 　　 男は　少年時代を グラスに満たす いつも　辿りつけない腕を 女にあずける 　　 女は 男のおや指と人さし指の間に 土を埋めてバラを育てる 　　 ひとつ咲くごとに 女は 美しい角度を廻転させる 男はその鋭角の中で 愛を　ひろげる 　　 女がシーツで愛を包むから 男は透き通ってこぼれて燃える 　　 やわらかい 手触りだけが 残された 寝台の　女の　上 　　 転がり落ちて行ったのは ：：：尾 　　 ＊ 　　 灰皿に 煙草が消える 　　 男は やさしい言葉を海に流す ない腕の ない指のバラを流す 　　 女のシーツを恋ながら 爪のように　皿のように うすく　溶ける
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