……………… また、夢をみた。 川は雛人形で埋まっている。 さっきからトモヨリさんは白い手袋のなかにフォークの指をしまったままだ。 私はおそるおそるソファーから立ち上がり、本棚に近づいていく。 本の表紙には何も書かれていない。手に取るとそれは思いのほか軽く、開くと表紙ばかりで中はもぬけの殻だ。 「中身がないよ」というと、トモヨリさんは笑う。からっぽだねと。誰かの頭の中みたいだねと。 「からっぽじゃないよ、トモヨリさんは」 私はだんだん哀しくなってくる。 「トモヨリさん、こっちに来て」 私は泣きながらいう。 「こっちに来て。フォークの指で痛くして」 「もう痛く出来ないんだ」とトモヨリさんは言う。そして、白い手袋を外す。 フォークの指は、なくなっている。
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