みみずくビルは、古いビルだ。 私は、ビルのオーナーだったひなたさんにもらわれて、 このみみずく町にやってきた。 私の本当の親は誰だかわからない。 親のいない子供ばかりいる施設で、私は10歳まで育った。 クリスマスイブの日、 まだ1歳に満たない赤ん坊の私は、 木箱に入れられて、粗末な服を着せられ、古びた毛布に包まれて、 施設のドアの前に捨てられていたそうだ。 まるでみすぼらしいプレゼントみたいに。 箱には、 「貧しくてこの子を育てられません。どうかよろしくおねがいします」 と書かれた手紙と、私の誕生日と名前の書いた紙が入っていて、 ぎゃあぎゃあ泣いていた私の首には、銀の十字架がかけられていたと、 施設の院長さんが言っていた。 今、首にかけている、このネックレスがそれだ。 私は別に、私を捨てた人のことが恋しいわけではない。 そんな人のことはもう忘れた。 私はこのネックレスが好きなだけ。ただそれだけだ。 　　 ひなたさんは、施設を回って、子供を捜していた。 かしこくて、機転がきいて、素直でやさしい、よく働く子供。 そして、10歳になったばかりの私を見つけた時、 やっと理想どおりの子供が見つかったと思ったそうだ。 私の名前も気に入ったと言っていた。
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