この間、また新しい借り手がついた。 駅前不動産のおやじが、部屋を見せてやってくれと、 一人の女を連れてきたのだ。 派手なとしま女が、おやじの後ろから顔を出していた。 私はなんだかドキッとした。どうしてだかわからない。 その女の顔を、どこかでみたような気がしたのだ。 　　 女はナナという名前の、旅芸人だった。 旅はもう飽きたから、しばらくはキャバレーみみずくで、 働くのだと言う。 キャバレーみみずくには、流れ者たちが寄ってくる。 みんな居ついたためしがない。 でも、私には関係ないことだ。 私は家賃さえもらえればそれでいい。
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