アタシはそのまま眠って、朝目が覚めたら、駅長さんが悲しそうな顔でアタシを見ていた。 「おじいちゃんは亡くなったよ」 なくなったって、何？ 「キラって名前なんだね。昨日、おじいちゃんが言ってたよ。キラをよろしくって。 それがおじいちゃんの遺言だ。おじいちゃんの最後の言葉だった」 ゆいごんって、何？ 最後って、おわりってことだ。 おわりはおしまいってことだ。 おしまいなんて、アタシは嫌いだ。 おじいちゃんはどこ？ また明日って言ってよ…。 　　 アタシは駅長さんに抱かれて、おじいちゃんのそばに行った。 おじいちゃんは冷たくて、固くなっていた。
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古いバスケットは駅のすみに置かれた。 これが今日からアタシのお家。 アタシは駅の猫になった。 アタシの前をたくさんの人が通る。 駅長さんはアタシをみんなに紹介した。 みんながアタシをみて「キラ」って、呼んでくれる。 「きれいな黒猫」って。 「お星さまみたいな目」って。 だけど、おじいちゃんはもういない。 　　 おじいちゃんは教会で眠っていると、駅長さんが教えてくれた。 でも、教会に行ってもおじいちゃんはいない。 教会の庭の日当りのいい場所に、大きな石がある。 石は冷たくて固い。 おわりの時のおじいちゃんみたいだ。 アタシはその石を、おじいちゃんと決めた。 昼間、アタシはおじいちゃんの石にくっついて、ひなたぼっこをする。 アタシはおじいちゃんの石にキスをする。 それがアタシのお祈り。 石のそばで、はねたり、のびをしたり、みゅうと鳴いたりする。 そうやっていると、おじいちゃんがまた戻ってくるような気がする。 時間がたつと、アタシは「また明日」と言って、バスケットのお家に戻る。 明日もおじいちゃんの石はここにある。 そう思って、アタシは安心する。
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