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アタシは町を散歩する。 声をかけてくる人間、頭をなでる人間、じろじろみる人間、追い払う人間。 アタシは気にしない。 世の中にはいろんな人がいる。 おじいちゃんがいつも言っていた。 「好きに生きてりゃいいんだよ」って。 不愉快な人間のそばにはいかない。 　　 アタシはこの町で、たくさんの素敵な場所をみつけた。 教会の庭。公園の繁み。川沿いの電車のみえる所。迷路のような路地。 ご飯をくれるやさしい人間もみつけた。 駅長さん、牧師さん。市場の魚屋のおにいさん。 特に好きなのは、橋を渡ったところにあるビルの、二階の部屋に住む二人だ。 晴れた日、その部屋の前で寝そべっていると、窓があいて、二人が顔を出した。 「駅の猫だよ」「うん、キラだ」 キラって、呼んでくれる。アタシはうれしい。 「キラは、音楽が好きだよね」「うん、好きだ」 二人にはわかるんだ。そう、アタシは音楽が好き。 　　 おじいちゃんは荷車の後ろにたくさんのダンボールを積んで、 いつも歌を歌いながら歩いていた。 アタシはおじいちゃんのコートのポケットから顔を出して、 それを聴いていたっけ。
	（懐かしい感じの音楽が入る）
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