……………
Ｍ		ある月のきれいな夜、僕ははじめてしょうこさんの部屋に呼ばれた。
Ｓ		服を脱いで。
Ｍ		僕は裸になった。
Ｓ		へえ、ちゃんと男の子のものがついてるんだ。
Ｍ		しょうこさんが感心して僕をみている。
Ｓ		とてもきれいよ。
Ｍ		窓から月明かりがさして、僕を照らしている。僕は少し悲しい気分になった。僕はひとりだ。しょうこさんはすぐそばにいるのに、しょうこさんと僕の間には１００年もの年月のへだたりがある。 ゆうれいの僕にも人生ってあるの？
Ｓ		深く考えないことよ。考えたって、始まらないわ。今はいっしょにいる。私は弱くってたよりなくってやさしいゆうれいのみつきが好きなのよ。
Ｍ		家出した父親よりも、行方不明の夫よりも、アフリカに行った兄さんよりも、ゆうれいの僕がしょうこさんの近くにいる。
Ｓ		弱くてたよりなくてやさしいみつき。
Ｍ		しょうこさんは僕のペニスを指で遊ぶ。それは、小さくてやわらかい。いつまでたっても、小さくてやわらかで、そこがとてもやさしいと、月明かりのなかで、しょうこさんは言う。
Ｓ		アフリカに行った兄さんから手紙が来たの。アフリカの月はとてもきれいですって。 ねえ、みつき、今度いっしょにアフリカに行こうか。
Ｍ		アフリカ…とても遠い。１００年よりも遠いだろうか。
Ｓ		遠いったって、地球は地球よ。宇宙のはての星から来たみつきには、ほんのご近所だわ。
Ｍ		僕は宇宙のはてから来たのだろうか。僕はずっと、駅前の、誰も来ない暗いお墓のなかにいたんじゃないのか。
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